ひとひらの雪


 ひとしきり話し終え、その時の恐怖を思い出してしまったのだろう。琥太郎は俯くと雪姫が着ているTシャツの袖をきゅっと掴む。


「分から、ないんだ…っ。どうして湊人くんがあんな風に変わったのか、僕が彼に何かをしたせいなのか。分からない、けど…っ」


 "今度は逃げるなよ"と湊人は言ったのだ。彼は何かを企んでる。きっと自身の手は汚さずに、とてつもなく恐ろしいことを。


「怖いんだ…っ。お願い、雪姫ちゃん。お願いだから、湊人くんには関わらないで…っ」


「琥太郎…」


──僕が今こうして生きていられるのは、晴流くんと雪姫ちゃんのおかげ。二人には傷ついてほしくない…。


 と、その時。ふと思い返した。晴流が昨日残したメッセージを。


"目撃者を信用するな"


これにばかり気を取られていたが、もう一つある。


"雪姫を…頼む"


 それは単純に晴流が居なくなったことで不安定になる雪姫を支えてくれという意味で捉えていた。しかし、もしかすると…。


──雪姫ちゃんに危害が及ぶかもしれない、ってこと…?



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