ひとひらの雪


 考えてみれば湊人の行動には不可解な点がある。晴流の事件を目撃してから警察に証言するまでの4日間の空白。このタイミングで雪姫と知り合ったこと。


──湊人くんは昔から無駄なことはしない。きっと何か目的があってのことなんだ。


 直接会ってはいない晴流がどうして彼を危険とみなし、伝えてきたのかは分からないけれど。可能性があるなら警戒しなければならない。たとえ、どんなに些細な事象でも…。


──と、その時。


 静寂を打ち壊してケータイのメロディーが鳴り出した。その曲ですぐに雪姫のものだと分かる。


「あ…ちょっとごめん。…っ、奈々だ。」


「…えっ、奈々ちゃんから?」


「うん。昨日晴流捜すの手伝ってもらおうと思って連絡したから、その折り返しだと思う。」


 着信には確かに【奈々・実家】と表示されていた。ケータイからでないことに些か疑問を持ったが勢い良く通話に切り替える。


「──もしもしっ」


『あっ……雪姫、ちゃん?あの、奈々の母です。』


「………えっ、涼子さん?」


 予想外なことに電話の主は奈々ではなく、その母・涼子だった。



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