ひとひらの雪
◆
同じように避難してきた人達で溢れかえるコテージの中、三人は入口に近い所で固まっていた。
「二人共、遅いねぇ…」
「…」
あれから大分時間が経っていた。だが晴流と斗真はまだ戻らない。激しさを増す雨音に、気持ちばかりが焦ってしまう。
その時、扉が開かれ巡回に行っていた係員が入ってきた。逃げ遅れた人達を誘導する為に先程出て行ったばかりだというのに、随分早い。嫌な予感がした。
係員は近くに居た同僚に報告をしている。雪姫達もそれに耳をそば立てた。
「──全部回ったけど、西ブロックだけ土砂で塞がれて先が確認出来ない──」
西側…晴流と斗真が居る場所だ。
「そんな…っ」
目を見開き言葉を失う奈々。どうしていいか分からず慌てふためく琥太郎。二人の足元に、水気を吸ったタオルが音を立てて落ちた。
「…え?」
「なっ、おい君!!」
気づいた時には雪姫が係員の制止を振り切って駆け出していた。傘も何も持たず、再び滝のような雨に突っ込んでいく。
「ちょ…っ、雪姫ー!!」
膨大な水の壁に阻まれ、奈々の声は届かなかった。
同じように避難してきた人達で溢れかえるコテージの中、三人は入口に近い所で固まっていた。
「二人共、遅いねぇ…」
「…」
あれから大分時間が経っていた。だが晴流と斗真はまだ戻らない。激しさを増す雨音に、気持ちばかりが焦ってしまう。
その時、扉が開かれ巡回に行っていた係員が入ってきた。逃げ遅れた人達を誘導する為に先程出て行ったばかりだというのに、随分早い。嫌な予感がした。
係員は近くに居た同僚に報告をしている。雪姫達もそれに耳をそば立てた。
「──全部回ったけど、西ブロックだけ土砂で塞がれて先が確認出来ない──」
西側…晴流と斗真が居る場所だ。
「そんな…っ」
目を見開き言葉を失う奈々。どうしていいか分からず慌てふためく琥太郎。二人の足元に、水気を吸ったタオルが音を立てて落ちた。
「…え?」
「なっ、おい君!!」
気づいた時には雪姫が係員の制止を振り切って駆け出していた。傘も何も持たず、再び滝のような雨に突っ込んでいく。
「ちょ…っ、雪姫ー!!」
膨大な水の壁に阻まれ、奈々の声は届かなかった。