ひとひらの雪


──やっぱり、わたしも残ればよかった…っ!


 西ブロックへと続く車三台通れそうな道は確かに土砂で塞がれていた。高さは5メートル程だろうか。雨水を大量に含み、今にも崩れ出しそうだ。


 だが雪姫は躊躇うことなくそれをよじ登った。元々考えるよりも先に行動するタイプ。臆して引き返したりはしない。


 土砂の山を踏み越え、ぬかるんだ道をひた走る。テントを張ってあった場所でようやく足を止めた。


「テントがない…二人は…?」


 雨霧で見通しの悪い景色の中、必死で辺りを見渡す。すると少し離れた山の斜面に懐中電灯の明かりが二つ見えた。


──間違いない。晴流と斗真だ。


 きっとテントを抱えた状態では先程の土砂を越えられないと、若干緩やかな山肌を選んだのだろう。恐らく頭の回転が速い晴流のアイデアだ。


 雪姫は雨音に負けないように、空気を胸いっぱいに吸い込んで叫んだ。


「晴流ぅーーっ!斗真ぁーーっ!無事ーーっ!?」


 二人はハッと気づいて声のする方を見た。微かに見える人影。雪姫だとすぐに分かった。



< 20 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop