ひとひらの雪
「…あのバカ、先に行けって言ったのに!」
「土砂崩れのことを知って俺達を心配して来たんだろう。」
晴流と斗真は無事だと伝える為に懐中電灯を大きく振る。それを見て雪姫はひとまず安心した。
「よかった…よしっ、手伝いに行くか!」
二人に合流しようと一歩踏み出す。
──その時。
ゴゴ…ッという、限りなく低くて不吉な物音が地を揺らした。
「わっ!?」
バランスを崩し前に倒れた雪姫。何事かと顔を上げた時、目の前で信じられない事が起きていた。
山の斜面が、砂の城が崩れるように滑り落ちていく。凄まじい轟音が雨の存在すら忘れさせる程に空気を震わせている。
あまりにも衝撃的な光景に呆然としていたが、二つの明かりが飲み込まれた瞬間、我に返った。
「え、やだ…晴流っ!!斗真ーっ!!」
突然発生した第二の土砂崩れは容赦なく二人を巻き込み、瞬く間に唸りを上げる濁流へと落ちていった。
ほんの数秒間の出来事で、何が起きたのか訳が分からない。しかし今自分が何をしなければならないのかは直感的に理解した。