ひとひらの雪


 全身全霊で暴れる雪姫に、咲季は叫んだ。


「あなたまでどうにかなったら、晴流はどう思うの!!!」


 その瞬間、雪姫は動きを止めた。


──晴流…


 同じ顔をしているくせに、雪姫とは真逆で感情も思考もあまり表に出さない双子の兄。


 いつも一番近くに居るからこそ分かる。晴流は今、斗真を助けられなかったことを自分のせいだと責めている。


「…おかあさんの言う通りだ。」


 今雪姫が無茶をして何かあったら、きっと晴流は壊れてしまう。何でも背負ってしまうひとだから。


「捜索隊の人達が、捜してくれてるんだよね?だったらわたし…信じて待つよ。」


「雪姫…」


 ボロボロと涙を零しながら、咲季は雪姫を抱きしめ直した。


「うん…待ちましょう。きっと大丈夫よ。」















 しかし一週間が経っても、斗真は見つからなかった。近隣の住人に聞いてもそれらしき人物の目撃情報はないという。















─7月28日─


 峰村斗真は死亡とされ、捜索は打ち切られた。





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