ひとひらの雪
雪姫が二人を連れてきたのは立ち入り禁止の屋上だった。そこからはグラウンドやバスケ部が練習をしている体育館が見渡せる。
本来ならば今頃、斗真もあの場所で部活に励んで居たのだろう。そう考えると枯れたはずの涙が再び滲んで視界を歪ませた。
雲一つない青空。それを見上げ、いきなり雪姫が叫んだ。
「斗真ぁー!聞こえるぅーっ!!?」
突然の出来事に奈々と琥太郎は硬直した。見ればグラウンドに居た野球部やサッカー部、陸上部の面々も驚いてこちらを見上げている。
「ちょ…っ、雪姫!」
自分まで恥ずかしくなり慌てて止めようとする。しかし雪姫は続けた。
「時間は掛かるかもしれないけどっ、わたし達ちゃんと生きていくから!心配しないでねーーっ!」
「…っ」
天国に居るであろう斗真に、叫んでいるのか。
あまりにも真っ直ぐでひたむきな雪姫の姿。ただ一人最期の瞬間を目撃したというのに、一番しっかり今を見据えている。
ただ泣きじゃくっていた自分が情けなく思えた。