ひとひらの雪




 新学期に入ると斗真の机の上には花瓶が置かれた。


 バスケ部に入る前は手の付けられない不良だった斗真。未だに恐れられていて、誰もそこに近寄ろうとはしない。


 けれど奈々が毎日取り替えている一輪の花だけは、変わらず暖かな光を纏っていた。















「あ、ごめん、そっち頼んで良い!?」


「ちょっと、資料が一枚足りないんだけど!」


 時は流れ秋も後半に差し掛かると、彼らは大忙しとなった。


 それぞれ推薦が決まっていた雪姫と奈々。雪姫は副キャプテンとしてバスケ部の、奈々は生徒会長である晴流の分まで生徒会の引き継ぎに追われた。


 一般受験組の琥太郎は、あれから大分回復したものの推薦試験を受けられなかった晴流と一緒に、病室で受験勉強に励んでいる。















 気がつけばあんなに暑かった夏が嘘のように、吹き抜ける風の冷たい冬が訪れていた。





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