ひとひらの雪




「寒…っ」


 年が明けた。母は仕事に出掛けている為、一人きりの朝。空は白灰色で今にも雪が降り出しそうだ。


「暇だなぁ…」


 昔からスポーツが大好きで、動かない日がなかった雪姫。こんな時はいつも五人で遊びに出掛けていたのだが、今はそれも出来ない。


 病院の面会時間は午後。それまでは頑張ってランニングにでも行こうか。そう思い、立ち上がって窓の外を見た。


「………えっ!?」


 思わず、窓を開け放って裸足で飛び出す。そこには予想外の人物が立っていたのだ。


「晴流…っ」


──退院は二月のはずじゃ…


 ふと晴流が巻いているマフラーが琥太朗の物だと気づいた。もしかすると、退院が早まったのを二人で秘密にしていたのだろうか。


「…雪姫。」


 驚きのあまり硬直していると、晴流の右手にそっと抱き寄せられた。そしてもう一方の手が優しく背中を叩く。ポン、ポン、と一定のリズムで。


 雪姫が奈々にもやったそれは、昔から晴流がしていてくれだ泣いてもいいよ゙の合図。



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