ひとひらの雪
第二章 重ねた手


 消毒の匂いに満ちた真っ白な空間で目覚める、何度目かの時。


 また押し寄せる複雑な感情の波が自分を消し去ろうと荒れ狂っている。


──オレは、ここに居て良いのか?生きていく資格があるのか?


 答えの出ない思考の闇の中、ふと左手の温かな感触に気づいた。


 ぎゅっと手を握ったままうたた寝をする雪姫。走りに行っていたのかTシャツとジャージというラフな服装だ。


 気配を感じたのだろうか。まだとろんとした表情で起きあがると、こちらを見て微笑んだ。


『あ…おはよっ』


 その笑顔に、温もりに、今まで自分は酷く心細かったのだと気づく。


『…おはよう。』


──ずっとここに居たい。


 お前には、そう思わせる力があるよ。





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