ひとひらの雪


 グラウンド脇の桜の花びらが暖かな風に舞う中、確かにそう誓った。


 まだまだ時間はかかるかもしれない。けれどいつか絶対に立ち上がれる、そう信じて。


「きっと大丈夫、だよね──」


 そっと囁いた言葉は、風に掻き消されて聞かれることはなかったけれど。


 また涙ぐんだ琥太郎や俯く奈々、空を見つめる晴流も、きっと大丈夫だから。そう思い、雪姫はいつものように微笑んだ。















 自分達は今、現実と向き合えているだろうか。


「…あっ、電車来た。わたし行くね!」


「ああ。」


 駅前まで来て二人は立ち止まった。ここから先雪姫は電車、晴流は徒歩だ。


「気をつけてね!」


「…また後で。」


 お互い軽く片手を上げ、歩き出した。


 数時間後にここの駅前広場に集合だ。そのことを思うと自然と足取りが軽くなる。


「…へへっ」


 階段を一段飛ばしで駆け上がっていく雪姫を見て、晴流はそっと微笑んでいた。





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