ひとひらの雪


 皆が噂しているのは今この県内で起きているらしい無差別障害事件の事だ。


 身近にある恐怖に人は敏感に反応するもの。その雰囲気はあまり気分の良いものではない。


──物騒だなぁ…。


 どうしてそんなことをするのか。人が傷つく瞬間を見て喜ぶ人間が居ること自体理解が出来ない。いや、理解などしたくもない。


 せっかくの楽しい日に嫌な気分にはなりたくないと、雪姫は頭を振って気持ちを切り替えた。















 部活の軽いミーティングを終え友達数人と駅に向かう頃、時刻は正午を回ったところだった。


──うん、間に合う。


 そのことにホッとしてお喋りに夢中になっていると、曲がり角で誰かとぶつかってしまった。


「わっ」


「あ、ごめんなさ……ってあれ、雪姫ちゃん?」


「…へ?」


 予想外に名前を呼ばれバッと相手を確認し、驚いた。


「…優兄!?」


「久しぶりだね。」


──峰村 優真(ユウマ)。


彼は斗真の兄だった。



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