ひとひらの雪




 駅に辿り着くと、そこは優真の言う通りの状況になっていた。


『──只今、爽北駅と南鞠駅間にて起きました列車トラブルの関係で、一時運転を見合わせております。お急ぎの方には大変ご迷惑を──』


「そんなぁ…」


 こういう日に限って電車が止まるなんてツイてない。まだ待ち合わせまで時間はあるが、それまでに動いてくれるだろうか。


「あれ、天城さんってここから二駅だっけ?」


「うんっ、そうだよ。」


「いーなー。あたしらみんな遠いから、まだ大分時間掛かるよー。」


 ウンザリしたようなその言葉を聞き、雪姫はあることに気がついた。


──わたし、歩いて帰れないこともないんだよね…。


 自転車通学が禁止の為今まで電車で通っていたが、普段雪姫が走っているランニングコースと距離は大差ないのだ。


 途中で晴流達の高校にも寄れるし、一石二鳥かもしれない。


「…よしっ、わたし走って帰ってみる!」


「「マジで!?」」


 リュックサックを背負い直し、スニーカーのつま先をトンッと馴らした。


「うんっ。じゃあまた明日、部活でね!」


 軽やかな足取りで雪姫は駆け出した。



< 43 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop