ひとひらの雪
「……え?」
思わず足を止めた。気がつけばそこは人気のほとんどない高架下。背中に冷たい緊張感が走る。
『…いいか?とりあえずこのまま走ってこい。俺達も今からそっちに行くから。変な人に会ったら大声で叫ぶんだぞ。』
「うん、わかった…」
今の今まですっかり忘れていた。急に一人で居ることの不安を感じる。
そういう事件があるのだと知ってはいても、人間は所詮それを他人事と捉えるものだから…。
──ジャリ…ッ
誰も自分が遭遇するだなんて、思いもしないんだ。
背後から聞こえた足音。嫌な汗が頬を伝う。
「…っ」
頭で考えるよりも先に脚が動いていた。とにかく、全速力でひた走る。遅れて状況を認識した脳が"逃げろ"と叫んでいた。
──そんな、まさか、通り魔なんて居るわけない…っ!
きっと近所の人か何かだ。突然足音が聞こえたから驚いてそう思ってしまっただけ。雪姫は自分に言い聞かせ、肩越しに後方を振り返った。