ひとひらの雪
崩れゆくもの
その日は色々大変なことになった。
『──雪姫、あんた大丈夫なの!?通り魔に遭ったって…』
ひとまず晴流と琥太郎が連絡を入れてくれ、家路についた頃。慌てた様子の奈々から電話が掛かってきた。
心配の色を滲ませるその声は妙に懐かしく、温かく感じた。
「うん、まあ…なんとか。ごめんね?」
『どうして謝るのよ?もし自分のせいで今日が台無しになったとか思ってるなら…怒るわよ。』
──奈々は怒らせると恐い。おかあさんよりも。
「ははっ…うん、そうだね。」
奈々は今からこちらに来ると言ったが、一人じゃ危ないから来週みんなで遊びにおいでと伝えた。
渋々了承した奈々にまた明日と言い、雪姫は電話を切った。
「…少しは落ち着いたか?」
麦茶の入ったグラスを二つ置いて、晴流はテーブルの反対側に座った。
「ありがとう。」
一口含み、数十分前の苦い記憶を反芻する。
すごく怖かった。膝が笑って歩けなくて、琥太郎におんぶしてもらって帰ってきたくらい。
──重かっただろうなぁ。ごめん、琥太郎。