ひとひらの雪
「買ってくるよ。」
晴流は立ち上がり、財布を持って玄関へと向かう。
「あ…ありがとう。」
若干不安そうな雪姫を見て、晴流はそっとその頭を撫でた。
「…大丈夫。俺は居なくなったりしない。あ、一応ドアの鍵は閉めておけよ。」
「…うんっ、分かった。」
扉を後ろ手で閉め、中から鍵が掛かったのを確認し、家を出た。
──あいつに誓ったからな。お前を守るって。
日の暮れかけた空を見上げながら拳を握りしめる。譲れない、絶対の約束だ。
今後は極力、雪姫を一人で外出させないようにしよう。そう思った。
「…ん?手紙…?」
門の脇の郵便受けから、何やら白い封筒がはみ出している。さっきは混乱していて気がつかなかった。
宛名も住所もない。とすると、直接投げ込まれたものか。訝しがりながらも、晴流はそれを開封してみた。中には二つに折り畳まれた紙切れ。
「…っ!?何だよ、これ…」
そこに書かれていたのはたった一行。だがそれは心臓を握り潰すような、呪いの言葉だった。
『お前が死ねば良かったんだ』