ひとひらの雪


 何だかいつもピリピリしていて、焦っているような、苦しんでいるような、複雑な表情を見せる。


 どうかしたのかと尋ねてもハッと笑顔を作って『何でもない』の一点張り。


──何かを隠しているのは確か。けどそれが分からない。


 琥太郎や奈々に聞いてみても心当たりはないというし、他に思いつくことと言えば…。


「…命日、かな…」


「え?何か言った?」


「あっ、ううん!何でもない!」


 今日は"斗真"の命日。正確には捜索が打ち切られた日、なのだけど。


 でも、それも違うと思った。そういう種の変化ではない。雪姫の知らない別の…何か。


──あーっ、分かんないや!


 難しいことを考えるのは苦手だ。今は部活に集中しなければ。


 シュート練習に移行中、斗真の言葉が脳裏を掠めた。


『ちくしょうっ、男バス予選敗退だ!雪姫、全国優勝任せたぞ!』


 中学であの約束は果たした。けど、もう一度やってやろうじゃないか。


──まあ、補欠だけど。


 雪姫の放ったボールは、あの大会の日のように綺麗な放物線を描いてリングへと吸い込まれていった。





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