ひとひらの雪




 晴流はずっと考えていた。こんな手紙を送ってきた人物は誰なのか。目的は何なのか。


 初めはあの通り魔かと思ったが、違う。偶然道端で雪姫を見つけ襲おうとしたのだから、パソコン打ちの封書を用意する時間など無い。文章の意味も通じなくなる。


 手紙はあれからも不規則に投げ込まれていた。決まって出掛けている間に入れてある為、相変わらず正体不明である。


 しかし回を重ねる毎にその意味、指し示すものが見えてきた。


『お前が死ねばよかったんだ』
『絶対に許さない』
『彼の死を忘れるな』
『明日は何の日だか覚えているだろう』


 四番目の手紙が届いたのは昨夜。つまり"明日"とは今日、7月28日を示している。他のキーワードと照らし合わせても間違いない。


──1年前の事故を知っていて、斗真の死で晴流を恨んでいる者。


 あれは事故だった。現に晴流自身、大怪我を負ってしばらく入院していたのだから。


 今、何故、そのように恨まれるのか。見当もつかない。


 しかしその答えに繋がるものは今、目の前にあった。



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