ひとひらの雪
「…5通目。」
雪姫を送り届け帰宅すると、郵便受けにまた白い封筒が入っていた。今日は命日。きっと核心に迫る内容だ。
ビッとやや乱暴に開封し、中の紙切れを広げて読んだ。そこに書かれていたのは…。
『夕方5時、一人で西沈橋に来い』
「…呼び出し、か。」
西沈橋。事故の起きたあの川の下流に位置する橋だ。場所としてはまあ納得である。
文章の内容から無事で済むとは思えなかったが、それでも放っておく訳にもいかない。無視をして後で身内に飛び火しないとも言い切れないからだ。
──行くしかなさそうだな。
覚悟は決まっていた。
今日はバイトもないし、夕方5時だと少し間がある。先にいくつか用事を済ませておこう。
手紙を郵便受けの中に戻すと、晴流は再び家を出た。
『──晴流っ!』
一瞬脳裏を掠める雪姫の声。思わず立ち止まる。
──迎えに行けそうもないな。
守ると約束したというのに、自分は今それを破ろうとしている。苦笑するしかなかった。
「…ごめんな。」