ひとひらの雪


「……雪姫ちゃん、やったねぇ。あんなになっても、練習、頑張ってたもんねぇ……っ」


 穏やかな雰囲気を纏う大柄な少年・琥太朗は人目もはばからずに泣き、


「本当、やってくれるわ……」


 若干皮肉めいた口調ではあるけれど、西洋人形を彷彿とさせる風貌の美少女・奈々は心からの笑みを浮かべていた。


 本当ならばあともう2人、ここで一緒に声援を送っていたはずだった。雪姫の活躍を、約束が果たされるその瞬間を、誰よりも願っていた2人が。


──だけど……。


 奈々は唇をキュッと引き結び、涙腺が弛みそうになるのを堪える。今は笑う時だと、自分に強く言い聞かせて。


 それよりもこの光景を目に焼き付けておこう、と視線をコートに戻した。礼を終え再び顔を上げた雪姫の表情はとても眩しく清々しい、太陽の笑顔だったから──。





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