ひとひらの雪
その日は雪姫達身内を含め、全員帰宅することになった。面会は意識が戻り次第だと医師に言われたからだ。
「じゃあ、またね。」
「うん。」
日はすっかり落ち、雨も弱くなってきた頃。奈々達三人の背中を見送り雪姫はロビーの長椅子に腰掛けた。
今、咲季は晴流の入院手続きをしている。それが終わるまでの間、しばし思考する時間が生まれた。
──どうして、西沈の方まで行ったんだろう。
そこは家からも学校からも遠い人気のない盆地で、何かがあるとは思えない。
気になる点といえばやはり、今日が命日であること。西沈は確かにあの川の下流だが、それなら直接あの川へ行くだろう。
──西沈橋じゃないといけない理由は?
自ら買って出た雪姫の迎えを予め琥太郎に代わってもらっていたところを見ると、こうなることは初めから分かっていたらしい。だとするなら。
──誰かと、会う為…?
そしてその"誰か"に晴流は刺されたのか。
そこまで考えた雪姫は、病院では使えないからと先程受け取ってきた晴流のケータイを取り出した。