ひとひらの雪




 ロビーでは声が響き周りに聞こえるとのことで、一同は場所を天城家に移した。


 リビングのソファに腰掛けた白髪混じりの年配刑事が麦茶を一口飲むと話を切り出した。


「改めまして、私強行犯係の鳩山と申します。」


「同じく鷺沼です。」


 続いて頭を下げるまだ若年の刑事。テーブルを挟んで向かい合う咲季と雪姫も名乗り、頭を下げる。


 警察が来たことでこれが"事件"であると再認識させられた。


「お辛いとは思いますが、これは立派な殺人未遂です。どうかご協力をお願い致します。」


「こちらこそ…」


 話はこうだ。晴流と最後に会ったのは何時頃か。晴流を恨む人物に心当たりはあるか。


 晴流は敬遠されこそすれ嫌われる人間ではないし、朝以降仕事に出ていた咲季は首を横に振るしかなかった。


「お嬢さんは?」


「…朝の9時少し前に高校の門の所で別れました。晴流は夏休みが始まってからずっと部活の送り迎えをしてくれていたので。」


「…それは何故です?」


 端から見たら過保護な行為なのだろう。雪姫は順を追って事情を説明した。



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