ひとひらの雪


 そんな強くも脆い母の背中を抱きしめ、雪姫は言う。


「ねぇ…おかあさん。」


「うん?」


「去年散々喚いといてあれなんだけど、わたし、少しは強くなったんだよ。」


 15歳。まだ大人とは言えないけれど、ただ辛い現実に塞ぎ込むだけの子どもではなくなった。現に今、こうして自分の意志で立っていられる。


「頼って、なんて偉そうなことは言わないけど。わたしにまで気を遣わないでね。」


 "着替えてくる"と言い残し、雪姫はバタバタとキッチンを後にした。その後ろ姿を見やり、咲季は表情を崩す。


「ふっ…気を遣ってるのはどっちよ…」


 ポタポタと、とめどなく流れる涙が皿の上で弾けた。















 その時、雪姫はある物を持って晴流の部屋に居た。まあカーテンで仕切っただけで実質二人の部屋なのだが。


「…やっぱり、あった。」


 勉強机の上に並べたのは開封済みの5つの封筒。一つは郵便受けに、残りは右上の引き出しにしまわれていた。


 ケータイに怪しい履歴がなかった為探したところ、予感は的中したという訳だ。



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