ひとひらの雪


 文章も読んだ。やはり斗真の命日に事件が起きたのは偶然ではないのだ。


──でも、誰が?どうしてこんなことをしたの…?


 あれは事故だった。雪姫はそれを直に見ているし、周りの人達も、斗真の家族でさえもそう認めている。


 犯人は、何を『許さない』のだろう。晴流はあの時のことを忘れた日なんて無いというのに。


 相手が憎くないと言えば嘘になる。けれど、それよりも"理由"が知りたかった。


「…あっ、そうだ。」


 スカートのポケットから先程貰った名刺を取り出す。


 警察には一年前のことは話してない。それは封書を見るまで確信が持てなかったこともあるが、雪姫自身が抱える秘密と晴流の意志に関わることだから。


 けれど斗真の存在を視野に入れない限り犯人は見つけ出せない。なら、話すべきだ。


 そうは思うもののなかなか電話に手が伸びないのは、脳裏を過ぎる想いが引き止めるから。


──ねぇ、晴流。本当にいいのかな…?


 この一年間に築き上げたものが根本から崩れそうな気がする。


真実を知りたい。
けど、失うのは怖い。



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