ひとひらの雪
雪姫は無言で頷くとウエストポーチから例の封筒を取り出し、テーブルの上にザッと並べる。
「ちょっと前からこんな手紙が届いてたみたいです。」
「拝見します。」
5通共ほんの1、2行の手紙なのだが内容が内容だけに刑事二人は顔をしかめ長いこと見ていた。
「…この"彼"というのは?」
若年刑事・鷺沼は3通目の文章を指して当然のように問う。
雪姫は飲み物を一口含み、答えた。
「──峰村 斗真。わたし達の友人です。」
そして話した。一年前の悲劇を。ポツリポツリと語られる過去を、刑事二人は真剣に聞いている。
それは偏に事件解明の為か。それとも一人の少女が抱える想いの強さ故か。
「…本当に、事故だったんです。」
カラカラになった喉を再度潤し、雪姫は続ける。
「犯人がどうしてそこまで恨むのかなんて分からない。わたしは、ただ…」
握りしめたグラスの中でカラン、と氷が溶ける音がした。
「大切なひとを、二度と失いたくない…っ」
叫びにも似た悲痛な想いは、あまりにもまっすぐで。