ひとひらの雪
─7月30日─



 翌日、雪姫と奈々と琥太郎は爽北中央総合病院に揃って立ち寄った。昨夜晴流が意識を取り戻したと連絡を受けたのだ。


 まるで一年前のよう。奈々の腕に抱かれている花束はやはり、霞草と青いスイートピーで。


「そういえば、なんでいつも青?」


「晴流くん…って、なんとなく青のイメージじゃない?とくに意味はないんだけど。」


「あぁ。言われてみればそうだねぇ。」


 確かに、と思った。晴流にはちょうど、頭上に広がる空の色が似合う。


 そんな他愛ない話をしている内に病室の前に到着した。


 一つ深呼吸してから扉に手を掛ける。


──ああ、去年と一緒だな。何もかも。


 またみんなで笑い合えるようにと、強くなろうと誓ったのに。


 自分達は変われていないのか。それとも、
..
誰かが悲劇を繰り返そうとしているのか。


 分からない。どちらにせよ、今は警察に頼るしかない。


「──晴流!来たよーっ。」


 無力な子どもである自分に出来ることなんて、たかが知れているのだから。



< 73 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop