ひとひらの雪
「"俺は居なくならない"って、言ったじゃんか…」
──もう、ひとりにしないでよ。
子どもじみた弱音が口をついて出そうになる。けれど晴流の手をぎゅっと握ってそれを堪えた。今は、泣く時じゃない。
「……き…」
ふいに漏れた声。ハッと顔を上げればそこには、しっかりと双眸を向ける晴流が居た。
「……晴流…」
そっとしておくつもりが起こしてしまった。しかもこんな、情けない顔をしている時に。
「…雪、姫。…ごめ…ん。」
「え…っ?」
強く、強く、握り返される手のひら。苦しげな表情とは裏腹にそれはとても温かい。
「…ごめん、な…」
たった一つの約束も守れずに何を背負えると言うのだろう。
今にも泣き出しそうな、けれど頑なに笑顔を作ろうとする雪姫を見て晴流は自身を恥じていた。
彼は天国に居るのか幽霊として傍に居るのかは分からないが、夕陽の沈む赤い空を見上げ心の中で呟く。
──そろそろ、覚悟を決めないとな。