ひとひらの雪




 薄暗くなってきた帰り道、思い出したように琥太郎が言った。


「そういえば昨日の夜、家に警察の人達が来たんだぁ。」


 彼の口をついて出た"警察"という単語に雪姫も奈々も一瞬面食らった。


「…もしかして、白髪のおじさんと短髪のお兄さん?」


「うん。あれ、知ってるのぉ?」


 雪姫は一昨日のことを話した。刑事達の来訪、ケータイの履歴を確認し琥太郎を尋ねると言っていたこと。


「ごめん、伝えるの忘れてた。」


「ううん。それどころじゃなかったもん。仕方ないよぉ。」


 いつものように無垢な笑みを浮かべる琥太郎。しかし今日は何だか無理をしているようにも見える。


 すると無言だった奈々もポツリと口を開いた。


「…私の家にも来たわ。昨日。」


「えっ!?」


 琥太郎は分かるが、どうして奈々の所にまで警察が行くのか。


 だが冷静に考えてみればそれは当たり前のことで、二人の元気のなさからも容易に想像出来る。


「…疑われて、るの?」


──晴流を殺害しようとした、犯人として。



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