ひとひらの雪


──みんなに、こんな顔させたかった訳じゃない…っ。


「…雪姫ちゃん?」


 ふいに足を止めた雪姫を心配そうに振り返る琥太郎。どうかしたのかと奈々も振り返り、そして息を呑んだ。


 いつもバカみたいに笑顔を浮かべている雪姫の、初めて見せる怒りの感情。自身を焼き焦がしてしまいそうな激しい青い炎を纏っているようだ。


「雪…姫…?」


「…ごめんね。」


 しかし予想外に紡がれたのは謝罪の言葉だった。


「なんで、あんたが謝るの…?」


 事件を起こした犯人ではなく、自分自身に対して怒っているというのか。


「…斗真に関係してるって気づいて警察に教えたの、わたしだから…」


 雪姫は、晴流に届いた犯人からの手紙について話した。


 命日に事件が起きたことで薄々感づいていたのか、聞いていた二人の瞳には驚愕ではなく動揺が伺える。


「犯人を見つけたくてそうしたけど、結果的にみんなを苦しめてる…っ。本当に、ごめん…」


 許されたい訳じゃない。これは、けじめの謝罪。



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