ひとひらの雪
「…っ」
そんな雪姫を奈々はぎゅっと抱きしめた。身長差のせいでぶら下がっているようにしか見えなくとも、しっかりと。
「あんたのせいじゃない…っ、あんたのせいじゃないわよ…!」
どうして雪姫はこんなにも抱え込もうとするのだろう。他人のことにはウザいくらいに干渉するくせに、誰にも自分をさらけ出さない。
──本当にバカだ。バカみたいに、優しい。
「奈々…琥太郎…」
とめどなく涙を流す二人を見て、しかし雪姫の心は変わらなかった。
──それでも、このままじゃいけない。
たとえ無茶だろうと何だってするし、何だって背負おう。そのくらいの覚悟ならとっくに出来ている。
「…ありがとう。大丈夫だよ。」
優しく奈々の腕を解き、雪姫は微笑んだ。
駅前の広場で二人に別れを告げ、その後ろ姿が見えなくなった頃。雪姫は一呼吸ついてケータイを取り出し、念の為アドレス帳に登録しておいた番号を選択した。
『──はい、もしもし。』
「もしもし、天城雪姫です。」
2コール目で出た相手は、鳩山刑事。