ひとひらの雪
──プツッ
答えにもなっていない一言を残し、電話は切られた。
「…」
「あれ、どうかしたんですか?」
缶コーヒーを両手に車に戻った鷺沼は頭を抱え溜め息を吐く鳩山に声を掛けた。
「はあ…あの娘完全にキレてるな…」
過去に友人を亡くし、自身通り魔に襲われ、身内が殺されかけて、友達が犯人として疑われている。
今まで平常心だったことの方が不思議だが、かなり扱い辛い怒り方をする子だと鳩山は頭を悩ませていた。
今の電話はただの決意表明ではない。警察に対する牽制だ。
"友達を傷つけるようなことはするな"と。
「…マズいですね。」
「ああ。」
──面倒くさい事件の担当になったもんだ…。
刑事達には申し訳ないが、引き返すつもりなど更々ない。
──今、奈々達の味方になれるのはわたしだけだから。
宛がない訳ではない。警察が調べることはないだろうジャンルの人物達を捜せばいいのだ。
調べるのは、峰村斗真を"恨む者"。