ひとひらの雪
はぐらかされたのは明白。唯一犯人を目撃している被害者に黙秘権を行使されてはどうしようもない。
「…はぁ。兄妹揃って、警察を何だと思ってんだ…」
愚痴のようなその小さな呟きに晴流は耳聡く反応した。
「"兄妹揃って"って…雪姫が何かしたんですか?」
「えっ」
失言だったと気づいたところで後の祭。零した言葉は還らない。
生憎上手くごまかす器用さは持ち合わせていないので、鷺沼は話すことにした。あくまで晴流の証言を促す為の起爆剤として。
「…自分で犯人を捜すと、言っていたそうだよ。」
「………は?」
意味がというより、何故そういうことになるのかが分からないと言いたげな表情。
「警察は今、君らの友達を疑っている。それを晴らしたいが為に一人で行動し出したんだ。」
「…っ」
先程まで憎らしい程に冷静だった少年の顔は見る見るうちに余裕を失い、瞳は細かく揺れた。
どうやら彼にとっての"雪姫"は想像以上に大切な存在らしい。
可哀想な気はするがしかし、話を聞き出すなら今だ。