ひとひらの雪


「晴流君、話してくれないかな?」


 何故、晴流はこうまでして口を噤むのか。何故、雪姫は危険も省みず犯人を追うのか。


 その姿はまるで、何かを必死に守ろうとしているようで。


「一年前の事故のことは妹さんから聞いたよ。けれど、もっと複雑な何かが君達にはあるね。」


「!」


 図星。その言葉を体現するかのように流れる冷や汗に、晴流は歯を食いしばり耐える。


「全てを話せとは言わないよ。僕らはただ、今回の事件を終わらせたいだけなんだ。」


──分かっては、いる。


 考え方によっては今自身がしていることは捜査妨害。失礼極まりないのだから。


 本当はこんな風に警察が介入するような大事にはしたくなかったのだが、そんなことを言っても今更だ。けれど…。


「…時間を、下さい…」


 今この場で簡単に明かせる程、安い真実でもないのだ。


「…一週間、いや、三日間待って下さい。お願いします。」


 晴流は傷の痛みを堪えて起き上がり、懇願した。



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