ひとひらの雪
鷺沼は戸惑った。覚悟を決める為の猶予だろうその間、果たして上を足止め出来るだろうか。まだまだ下っ端の自分に。
まるで文字通り"一生のお願い"とでも言うような晴流の姿にしかし、心を動かすのは早かった。
「…うん、分かった。約束しよう。」
捜査は難航している。三日くらいなら待つことも出来るだろうと判断し、力強く頷いた。
「…ありがとう、ございます。」
言葉とは裏腹に晴流の表情は優れない。その原因はきっと、今現在鷺沼が抱いているものと同じだろう。
──やっぱり、気掛かりだよなぁ…。
会ってまだ間もないが雪姫がいかに無鉄砲な子なのかはよく分かる。具体的に何をする気なのかは不明だが無茶なことだけは止めてほしい。
それに三日前喫茶店に居た時、仲間から電話で受けた報告のこともある。
『──直接の関わりはないが、天城晴流の周囲に前科を持った人間が二人居る。』
──頼むから、そこには行き着かないでくれよ…。
やはり雪姫にも誰かマークを付けるべきだと、鷺沼は密かに思った。