ひとひらの雪
◆
大会を前にした束の間の休み。いつもに増して照りつける太陽を背に、雪姫はある場所へと足を踏み入れていた。
市立爽北中学校。雪姫達5人が出逢い、通っていた学舎。
卒業してからたったの数ヶ月だというのに、なんだか妙に懐かしさを感じる。
通路の幅が狭すぎて人とよくぶつかった下駄箱も、校長先生の趣味で菜園と化している中庭も、何ら変わりない。それが嬉しくもあり、悲しくもある。
──まるで"斗真"なんて初めから居なかったみたいに、そのままの空気が漂っていて。
今日は遊びに来た訳ではない。あくまで犯人を特定する為に、雪姫はある人物を訪ねることにしたのだ。
──コンッコンッ
「失礼しまーす…」
職員室の扉を開けキョロキョロと見渡す。さすがに夏休み。中に居たのは一人だけ。
「──おう、天城妹。元気してたか?」
そしてその人・鬼頭(キトウ)こそが目的の人物である。名前、顔、声のトーン。三拍子揃ってヤクザのような彼だが、立派な教師だ。
直接話したことは数える程だったが雪姫のことは覚えていたようで、突然の訪問にも快く応じてくれたのだ。
大会を前にした束の間の休み。いつもに増して照りつける太陽を背に、雪姫はある場所へと足を踏み入れていた。
市立爽北中学校。雪姫達5人が出逢い、通っていた学舎。
卒業してからたったの数ヶ月だというのに、なんだか妙に懐かしさを感じる。
通路の幅が狭すぎて人とよくぶつかった下駄箱も、校長先生の趣味で菜園と化している中庭も、何ら変わりない。それが嬉しくもあり、悲しくもある。
──まるで"斗真"なんて初めから居なかったみたいに、そのままの空気が漂っていて。
今日は遊びに来た訳ではない。あくまで犯人を特定する為に、雪姫はある人物を訪ねることにしたのだ。
──コンッコンッ
「失礼しまーす…」
職員室の扉を開けキョロキョロと見渡す。さすがに夏休み。中に居たのは一人だけ。
「──おう、天城妹。元気してたか?」
そしてその人・鬼頭(キトウ)こそが目的の人物である。名前、顔、声のトーン。三拍子揃ってヤクザのような彼だが、立派な教師だ。
直接話したことは数える程だったが雪姫のことは覚えていたようで、突然の訪問にも快く応じてくれたのだ。