ひとひらの雪
「どうも、わざわざ時間作らせてすみません。」
「いや、構わんさ。つーか相変わらずデケェな。また伸びただろ?」
「はいっ、172cmです。」
しばし他愛ない話を交わしていたが、区切りのいいところで雪姫は本題を切り出した。
「…先生。早速なんですけど、教えてもらえますか。」
真剣な表情になった雪姫に鬼頭も真面目な顔で頷く。
「峰村がよくケンカしてた相手…だったな。」
「はい。」
一年生の秋からあの事故が起きるまではずっと斗真と一緒に居たが、それ以前のことはあまり知らなかった。
その頃の彼のことは生活指導に当たっていた鬼頭の方が詳しい。
「そうだなぁ。特定の相手は居なかったぞ。一年から三年まで日替わりでケンカしてたかんな、あいつ。」
全員とはいったい何人なのだろうか。あまり多いと絞り込むのは骨が折れそうだ。
「あー、でも一人居たっけな。直接じゃねぇが峰村に何回もケンカ売ってたバカが。」
「えっ、誰ですか!?」
手掛かりは一つでも多く得たい。思わず前に身を乗り出す。