ひとひらの雪
そういえば鬼頭には中学時代、斗真も含めて"仲良し5人組"と呼ばれていた。かなり個性がバラバラなのに上手くまとまっている、と面白がられて。
「…わたしの中では、今でも"5人"ですよ。」
──わたし達はみんなそれぞれ欠けているものがあるから。全部合わせて一つ、だから。
「ははっ、そうか。すまんすまん。…なぁ、天城。」
「はい?」
鬼頭は突然真剣な、けれども優しい声を掛けた。
「今になって峰村の話を聞きたがんのは何かワケがあんだろう?」
「…」
「まぁ問いただしゃしねぇけどさ、あんまし危ねぇことはすんなよ。」
あえて"あんまし"と付けたのは、雪姫が初めから何かをするつもりだと気づいていたからだろう。
頭ごなしに叱りつけたりしない。それが鬼頭の良いところであり、信頼を寄せる理由。
「…へへっ、うん!ありがとう先生っ」
雪姫はペコッと勢い良く頭を下げると小走りで職員室を出て行った。
「おーい、廊下は走んなって。ったく…」
その姿はまるで、目標を見つけ突進する猪の如く。