ひとひらの雪
──峰村優真が犯人じゃないとしたら、益々分からない。
ここまで他人の顔色を窺える少年に誰が殺意を抱くだろうか。
犯人からの手紙にあった『お前が死ねばよかったんだ』という言葉。あれは相当な負の感情がないと出てこないはず。
──なあ、晴流くん。君は何をしたんだ?一体何を隠している?
「じゃあ、僕はこれで。久しぶりに話せて嬉しかったよ。」
「…俺もです。ありがとう。お元気で。」
一頻り話し終え、優真は席を立った。晴流は軽く手を挙げその姿を見送る。本当にただのお見舞いだったようだ。
鷺沼は扉を開け退室を促す。素直にそちらへ向かいながら何故か優真はスッと壁に触れた。
「…どうかしたのかい?」
「…いえ、虫が居たので。」
そう言うと優真は何事もなく帰っていき、鷺沼も廊下へと出ていった。
「…」
再び病室に一人になり、晴流は何気なく優真が持ってきた花を眺めた。
淡い色のガーベラ。その柔らかい花びらの間に埋もれるように…
1通の、白い封筒が挟まれていた。