ひとひらの雪
「あれっ、琥太郎。どうして…」
「お遣いの帰りだよぉ。そうしたらここに雪姫ちゃんの姿が見えたから。」
琥太郎は大量のビニール袋を降ろしながら屈み、ベンチに座る雪姫と目線を合わせた。
「…何かあったの?まだ通り魔だって捕まってないのに、一人で居たら危ないよぉ…」
「…あっ。」
晴流の事件で頭がいっぱいで雪姫自身すっかり忘れていた。つい数日前通り魔に襲われたばかりだというのに一人で彷徨くなんて、人一倍心配してくれている琥太郎は何と思うことだろう。
「あー…ごめんねっ。大会近いからランニングしてて、ちょっと疲れちゃっただけ。」
笑顔を浮かべまんざら嘘ではない理由を述べると琥太郎は少しだけホッとしたようだった。
「良かったぁ。雪姫ちゃん一昨日いつもと様子が違ってたから、何か無茶するんじゃないかって思ってたんだぁ。」
「へっ?」
一昨日と言えば、雪姫と奈々と琥太郎の三人で晴流のお見舞いに行った時だ。
──ああ、そう言えばわたし、あからさまに怒っちゃったんだよね…。
昔、辛い時も悲しい時もいつだって笑っていようと決めていたのに。