未定
日常

厳しい残暑が終わり、ヒヤリとした秋の空気が流れる十月中旬の早朝。

今日も慌ただしく、私の一日が始まる。

シャーッ…!

「パパ、颯!朝だよ、起きてーっ!! 」

午前七時。朝ご飯とお弁当の支度を終えた私の次なる仕事は、モーニングコール。

「ん~…あと五分…!」

出ました得意の、あと五分攻撃。夫の篤史(アツシ)は朝が大の苦手だ。

「ほら颯も起きて!幼稚園遅れるよ!」

「う~ん…あとごふん!」

半年前から幼稚園に通い始めた息子の颯太(ソウタ)は最近何でもパパの真似。寝相はともかく、朝寝坊なところはパパ以上だから本当に困る。

「もう!いい加減にしなさい!!」

痺れを切らした私は勢いよく二人の布団を剥ぐ。

「さむっ!!」

「ママのおにぃ~!!」

必殺技を喰らった男どもはブツブツ文句を言いながらも、のそのそと準備を始める。

大仕事を終えた私はキッチンへ向かい、三人分のご飯と味噌汁をよそう。

「パパ、きょうはやくかえってくる~?」

「うん。帰ったら一緒にお風呂入ろうなぁ-?」

「うん!また内緒の話するー!」

篤史と颯太はここ最近、毎晩のように一緒にお風呂に入る。

ついこないだまで、何をするにもママと!だったのに、幼稚園に通い始めた頃から颯太は急激にパパっ子になってしまって、寂しさを覚える今日この頃…。

「たまにはママも混ぜてよ~?」

「ママはおんなのこだからダーメ!」

「男同士の話があるんだもんな~?」

仲良く肩なんか組んじゃって、私だけ蚊屋の外ですか…。けど、そんな二人の楽しそうな顔を見るのが私の幸せだったりする。

「よしっ!」

朝食を終え、篤人と颯太を見送ると私はひとり、朝食の後片付けを始める。

それから掃除、洗濯、買い物。新婚の頃はてんてこ舞いだった家事も、四年経てばすっかり手慣れたもの。

篤人と私はいわゆる"できちゃった結婚 だ"。三年前、私の妊娠を知った篤人は泣きながら喜んでくれた。

『 結婚しよう。絶対幸せにするから!』

あのプロポーズの言葉は通り今、篤人は私を幸せにしてくれている。

毎日家族のために一生懸命働いて、颯太のことも私のことも本当に大事にしてくれて。きっと彼は私にはもったいないくらい素敵な旦那様。

おかけで私は今、幸せだ。


ただひとつだけ。

私には、忘れられない人がいる。どうしても、忘れられない恋があるー
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