未定
不安
「紗衣。久しぶりに、飲まない?」
お風呂から上がると、缶ビールを手にした篤人がリビングで待っていた。
時刻は午後十時。いつもなら颯を寝かしつけながら、自分も一緒に寝てるのに。
「うん。ちょっと飲もうかな。」
" 何かあったんじゃない?…イクと。"
いつもと違う篤人の行動に戸惑いながら、私は彼の隣に座った。
「今日も1日おつかれ。」
そう言って静かに乾杯して、私たちは二人だけの小さな宴会を始めた。
とは言ったものの、話のほとんどは颯のこと。結局、私たちは二人揃って親バカなのだ。
「俺さ。紗衣に言わなきゃいけないこと、ある。」
飲みはじめて一時間がした頃。酔いが回ったのか、篤人の声のトーンが低くなる。そして、私をまっすぐに見てそう言った。
「…なに?」
理由はわからない。ただほんの一瞬、私は僅かな胸騒ぎを覚えていた。
「俺、イクに会った。」