失 楽 園



「どうしたの? 恭ちゃん」


勉強机に座ったまま、
顔だけこちらに向けて
姉さんは困ったように曖昧に微笑んだ。



 『恭ちゃん』――…。



姉さんがその名で僕を呼ぶ度、
僕の血はカァーッと
沸騰でもしたように、
熱く煮えたぎる。

母さんと同じように僕を呼ぶ姉さん。

それはまるで、

『貴方は家族で、
 それ以上でもそれ以下でもない』

と言われているようで――…。


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