失 楽 園



姉さんの手首を握る僕の手が、
ぬるりとぬめるのがわかる。


「姉さん……?」


恐くて、
何故だか物凄く恐くて、
僕は短く呼吸をしながら、
手を開いた。



僕の手に散った、鮮血。



「姉さん!!」



僕は叫んで、
姉さんの腰にすがった。


「どうして、こんな……っ!」

「なんでもない!!」


僕は驚いた。
姉さんが叫ぶのを、
初めて聞いたからだった。

姉さんは左手首をぐっと押さえ、
僕を見つめる。


「なんでもない……。
 なんでも、ないから……」

「…姉さん……」


姉さんが俯く。

姉さんの膝に置いた僕の手に、
さら、と姉さんの綺麗な髪が触れた。


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