失 楽 園




リビングでくだらない
バラエティー番組を見ていたら、
かしゃん、と皿の割れる音が聞こえた。


僕はリモコンをテーブルに置き、
すぐに彼女の元に行く。



キッチンでは、
彼女が皿の破片を拾おうと
床に手を彷徨わせていた。


「……僕がやるよ」


彼女は僕の声を聞き付け、
ぱっと笑顔になり顔をあげる。


「恭ちゃん」

「見えないんでしょう? 危ないよ」


「でも、私……」


僕の制止を無視して、
彼女は鋭利に光る破片に手を伸ばした。





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