失 楽 園




「あ……っ」


小さな悲鳴で、
僕の意識は現実に呼び戻される。

彼女の白く細い指には
ぷくりと血の玉が出来ていた。

僕は何も言わずに彼女の手を取り、
血を滲ませる指先を口に含む。


「恭ちゃん、くすぐったい」


からからと彼女が笑うのを
微笑ましく思いながら、
僕は彼女の手を口から離した。



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