失 楽 園




「はい、消毒完了。
 僕がやるから、あっち行ってな」


優しく彼女の頭を撫でながら言うと、
彼女は納得いかなさそうに唇を尖らせた。


「でもね、恭ちゃん。私は……」


その時、
寝室から小さな泣き声が聞こえた。

僕はくす、と笑い、
彼女を立ち上がらせる。


「お姫様たちがお呼びだよ、お母さん」


すると彼女もくすくすと笑い、
こう言った。


「そうだね、お父さん。行ってくる」


壁伝いにそろそろと歩く彼女を
不安に思いながらも、
僕は目を細めて微笑みながら
彼女の背中を見送った。


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