失 楽 園
……――私はソレが嫌いだった。
私はソレが嫌いだったのに、
ソレは私のことが
好きなようだった。
にこにこと両親を虜にする
忌々しい笑顔を浮かべ、
私の後ろをついてくるソレ。
両親のいないところで
私はたまにソレのほっぺたを
つねって遊んだ。
ソレの頬はとろけそうなくらい
柔らかかった。
大きな目。
ピンクの唇。
ふわふわの髪の毛。
ソレの顔は、
世間一般から見て
ひとより優れたものだったらしい。
家族で外を歩いた時、
赤ちゃんモデルだとかいうものに
スカウトもされたと両親は
近所の住民に自慢していた。
持て囃されるソレは、
私に更なる劣等感を植えつけた。