失 楽 園




……――私はすっかり
手のひらに馴染み
体温が移ってしまった
瓶を開け、錠剤をすり鉢の中に出す。

子どもたちが大人しく
リビングで遊んでいることを
耳で確認し、私は錠剤を
すりつぶし始めた。

こりこりと小さく音をたてて、
白い錠剤が細かくなっていく。

一通りすりつぶし終わった後、
私は冷めたシチューを温める為に
コンロに火をつけた――……。



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