失 楽 園
……――言われた門限に
帰らなかった幼い私を、
両親は罵り、殴り、蹴った。
どうして門限を破ったくらいで?
私は何故自分がこんな目に
遭うのかわからなかった。
確かに私も悪かったかも知れない。
たかだかメール一通で
遅くなるだなんて、
甘すぎたかもしれない。
けれど。
だからといって、
私をここまで殴る必要があるの!?
気を失う寸前まで殴られ、
床の上に転がっていた時、
ソレの小さな手が私の頭を撫でた。
「おねえちゃん」
舌足らずの言葉で、呼ばれる。
「おねえちゃん。おねえちゃん。だいようぶ?」
大丈夫、が、
『だいようぶ』になっていた。
鼻の奥がつんとして、
もう出し尽くしたと思っていた涙が
また滲み始める。
「おねえちゃん。いたい?
」私はたった二歳になったばっかりの
ソレ――……弟の手を握って、泣いた。