失 楽 園
皮肉にも、私は憎くて憎くて
たまらなかった存在の、
弟に救われたのだ。
それから私と弟の仲は、
急速に親密になっていった。
「きょーや」
そう呼べば、恭夜はにこにこ
笑いながら私に抱きついてくる。
「なあに? おねえちゃん」
その無邪気な笑顔は、私の
カサカサに渇ききった心に
潤いを与えてくれた。
可愛い恭夜。
恭夜だけが、私を見てくれる。
恭夜だけが、私の存在を
受け入れてくれる。
私は恭夜が、好きだった。
女としてではなく、
勿論、家族として。
同じ血を分け合った、
姉弟として――……。